【直下率とは】家を建てる前に買う前にしっかり学ぼう!

学び舎

どうも! とろかふ。です。

現在、私は木造住宅等の構造設計の仕事に従事しております。
その中で、直下率という木造の建物における指標について、お施主様の中には重視したいとおっしゃられる方もおられます。

ここでは、これから住宅を建てる方や中古物件の購入を考えている方、「直下率ってなに?」という人などに向けて、直下率の概念をわかりやすくお伝えして参ります。
そして、直下率に関する私とろかふ。の見解も含めてお伝えさせていただきます。

この記事は、以下の方々に向けて書いております。
・これから家を建てる予定の方
・中古物件の購入を検討している方
・建築を学びたい方
・構造設計者視点の見解を求めている方 など

 

直下率とは

直下率という言葉を聞いたことはあるでしょうか。
直下率を簡単にお伝えすると、平屋建て以外の建物(2階建てや3階建て)において、
柱や耐力壁が上下階でどのくらいの割合で同じ位置にあるかを示す指標になります。

直下率のきっかけ

直下率という言葉が広まってきたのは、2017年に発生した熊本地震の後のことだそうです。
それまでにも直下率という言葉自体はありましたが、2011年の東日本大震災では、建物の多くが津波による倒壊であったため、
そこまで広まらなかったようです。

<!-併せて読みたい 耐力壁とは?->

直下率の計算

直下率を言葉だけで理解するのは難しいと思いますので、簡単な画を作ってみました。

計算例1

この画では、1階と2階に柱が3本づつ建っており、梁や土台、耐力壁で構成されています。
柱が1階に3本、2階に3本あり、3本中3本が上下階で同じ位置にあることから、
柱の直下率 = 2階の柱の本数 / 1階の柱の本数 = 3本 / 3本 = 100% となります。

上下階で耐力壁の位置が一致していることから、
耐力壁の直下率 = 2階の耐力壁 / 1階の耐力壁 = 100% となります。

計算例2

2階の柱を1本抜いてみました。
これで計算すると次のようになります。

柱が1階に3本、2階に2本あり、3本中2本が上下階で同じ位置にあることから、
柱の直下率 = 2階の柱の本数 / 1階の柱の本数 = 2本 / 3本 = 約67% となります。

耐力壁の直下率は、先ほどと同じ100%になります。

直下率の計算について、お分かりいただけましたでしょうか。

どれくらい直下率が必要か

直下率の計算方法が分かったところで、実際にどれくらいの割合が必要なのでしょうか。
それを知るには、以下の調査が参考になると思います。

2017年の熊本地震後に、倒壊した建物と倒壊を免れた建物で、調査が行われました。
その結果、直下率が低い建物の方が倒壊率が高かったそうです。

引用元:建築知識2017年5月版

調査結果によると、直下率が柱においては50%以上、耐力壁に関しては60%以上ある建物の場合、
建物への被害が少ないことが分かったそうです。
直下率は高ければ高いほど、建物の倒壊リスクは減少するという調査結果になったようです。

直下率の注意点

「直下率」は、上の調査結果において、建物の倒壊に関係するかもしれないということがわかりました。
とはいえ、この調査結果を鵜呑みにすることには注意が必要です。

その理由を以下に示します。

まず、「直下率」は、現時点で法律で定められた基準では無いということです。
法律で定められた基準ではない以上、構造設計を行う際は、構造設計者の判断に委ねられます。
私自身、構造設計の際には、直下率を意識しながら設計をしていますが、
構造設計者の中には「直下率?なにそれおいしいの?」という人も少なからず居られます。

以前、何処の掲示板で見たのですが、お施主様(建物を建てる人)が住宅展示場に行った際、
展示場のスタッフ(おそらく営業の方)が「直下率」を知らなくて失望したという話を見たことがあります。
このお施主様は、自分の家の事なので、事前にしっかりと勉強され、「直下率」を学ばれている事に関しては、素晴らしいことだと思います。

ですが、上でもお伝えしたように、「直下率」は現時点で法律に定められた基準ではないですし、構造設計者でも知らない人がいるのに、スタッフが知っている訳がありません。
中には知っている方も居られるでしょうが、中身まで知っている方は少数でしょう。
直下率とは、あくまで構造設計に関わる内容なので、意匠設計の際に「直下率」まで考える人は、ほとんどいないと思います。

直下率に関する記事ですので、調査結果の直下率ばかりに目が行きがちですが、そもそも壁量充足率が少ないことも、建物の倒壊へと繋がった可能性があります。大破した物件では、壁量充足率が1.3程度であるのに対し、軽微な被害、小破の物件では、壁量充足率が1.9程度となっているようです。単に、壁量が足りなくて倒壊した可能性が十分考えられます。

直下率の落とし穴

構造設計者同士で意見が分かれるとろこですが、私の意見としては、耐力壁は市松状配置が良いと考えています。
市松状配置とは、耐力壁の位置が上下階で1つズレた位置に配置をすることです。

<!- 市松状配置についての詳細はこちら。->

しかし、市松状配置にすることで、「直下率」に問題が発生します。
柱に関してはそこまで問題にはならないのですが、耐力壁を市松状配置にすると直下率がべらぼうに下がるのです。
上の画で分かるように、耐力壁が上下階で同じ位置に無いので、直下率は0%になってしまいます。
構造的に市松状配置にはメリットがあるのですが、直下率と市松状配置は、相性が良くなさそうです。

また、1階の大きさに比べて2階が極端に小さいような場合、直下率の計算式である分母の数値が大きくなるため、
直下率の数値が極端に悪く見えてしまいます。

柱が1階に5本、2階に3本あり、5本中3本が上下階で同じ位置にあることから、
柱の直下率 = 2階の柱の本数 / 1階の柱の本数 = 3本 / 5本 = 60% となります。
この例では、直下率は十分な値になってしまいましたが、この例よりも1階の柱の本数が増えてしまうこともあることでしょう。

さらには、直下率は画でお見せしたように平面で計算するのではなく、
実際には、2階のすべての柱 / 1階のすべての柱 で計算されます。

例えば、1階の柱の総数が50本で、2階の柱の総数が20本で、柱の位置が上下階で一致すると仮定すると、
柱の直下率 = 2階の柱の本数 / 1階の柱の本数 = 20本 / 50本 = 40% となります。

こうなると直下率としては、アウトになります。

直下率を守るのは難しい

構造計算ソフトでは、直下率を簡単に知ることができます。
私が普段使用している計算ソフトでは、自動的に直下率を算出してくれます。

しかし、私自身「直下率」を意識しながら構造設計をしているとはいえ、
「直下率」を柱は50%以上、耐力壁を60%以上を守るのは非常に難しいということをお伝えしたいです。

理由は、上で述べた点に加え、構造設計が依頼される頃には、ほぼプランが決まっているからです。
「ここに窓があって直下率的によろしくないので、窓を無くすなり移動するなりしてください」と要望したところで、「ここには窓が必要です」と言われてしまえばそれまでです。
「直下率」を守るために、プランを変更していただくことがほとんど出来ないのです。

もし、これから住宅を建てる方で、「直下率」を気にされるのであれば、設計当初から構造にも気を配ることです。
構造設計者の方に、直下率が柱で50%以上、耐力壁で60%以上となるように予め相談されるのが良いと思います。
構造設計者の意見を取り入れた上で、意匠設計様にプランを依頼するのが良いのではないでしょうか。

これを言っては元も子もない話ではあるのですが、直下率も意匠性もどちらも重視するというのは、実務上難しいです。
構造的には、いかにシンプルに架構を組み上げるが重要になるのに対し、意匠的には、いかに快適に理想に近い家を計画するかが重要になってくるからです。
構造を取るか意匠を取るかは、お施主様それぞれの考えによって異なるのですが、やはり意匠性が優先されることが多いように感じます。

おわりに

内容が長くなってしまいましたが、ここで「直下率」のポイントをおさらいしたいと思います。

・直下率は、現時点で法律に定められた基準では無い。
・直下率の認知度が、そこまで高くない。
・構造設計段階で、直下率を目標値に持っていくのは難しい。
・直下率と市松状配置は、現在の算定方法では運用上の相性が良くない。

以上で直下率の概念の説明となるのですが、この記事により、今後木造で住宅を建てる方や購入を考えている方の参考になれば幸いです。

では、また。

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